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ラルフ・クロムウェルは国王ヘンリー6世の下で大蔵卿を務め、のちには侍従長に就いた。城を煉瓦造りにしたのは彼の財力を示すためだった。
高さ40メートルの主城塔にはフランドルやフランスから呼び寄せた職人が作った70万個とも100万個とも言われる煉瓦が使われている。
煉瓦造りの塔は見た目を優先したものだったが、防御面を無視していたわけではなく、主郭は城壁で囲まれゲートハウスと水濠で防御を固めた。

ラルフの死後タターシャル城は彼の姪が相続したが、その夫が薔薇戦争で戦死すると王家に没収され、王や王族に所有された。
ヘンリー8世の時代に王妹メアリー王女の夫・サフォーク公爵チャールズ・ブランドンに与えられると、彼によって更に改装が行われる。
主城塔内部の改装のほか、中庭には当時の流行だったジョウスト（馬上槍試合）用のコースが新たに設けられた。
サフォーク公チャールズが死ぬと城はリンカーン伯クリントン家に受け継がれ、6代目の伯爵が没する1693年までその居城となる。
その間イングランド内戦では議会派に組したため、ニューカッスル伯ウィリアム・キャベンディッシュに率いられた王党派軍によって攻撃され落城。この時、王党派軍は煉瓦造りの主塔には危害を加えずに去った。
内戦が終結した後に破城令が布告され破壊の危機に瀕したが、リンカーン伯が嘆願を繰り返したことで存続を許された。ただし主城塔以外の塔と城壁はほぼ完全に破壊された。

その後フォーテスキュー家が城を買い取るが、南部のデヴォン州を本拠とするこの一族が城に住むことはほとんどなかった。
やがて城は荒廃し、当時流行していた廃墟巡りの観光地となった。
19世紀末には暖炉などがまだ残っていたが、1910年にアメリカ人オーナーに買い取られると内装は解体されて輸出されてしまった。
このようなあまりの状況の悪さを憂慮した地元の教会はボディアム城などを保有し修復を進めていたカーゾン侯爵に助けを求める。
侯爵はこれを快諾し城を買い戻して修復工事を進め、1925年にカーゾン候が死去するとボディアム城と共にナショナル・トラストに寄贈された。

城郭構造

ラルフ・クロムウェルによって再建された当時のタターシャル城は中央部に主郭を持ち、その周辺を外郭が囲んでいた。
主塔は主郭の北西角を守備し、その他に城壁には4つの円形防御塔があった。北東角に主城門塔を置き、南側に塔付き搦め手門を配した。
煉瓦造りの主城塔は四隅に塔を持つ高さ40メートルの五層構造で、現在でも屋上まで登って眺望を楽しむことができる。
主城門塔の先が中郭と呼ばれ、その西側に水濠を隔てて外郭があり、こちらには厩があった。外郭の北面に大手門が新設された。
中郭と外郭は主郭を囲んで城の南側で繋がっており、そしてその全体を外濠が囲んでいた。
このうち南側の外郭は庭園になっていたが後に破却され、外濠は内側に短絡されて縮小。外濠は幅も縮小された。
現在は主郭とそれを囲む水濠、縮小後の外郭が残っている。外側に残っている守衛小屋は現在は売店になっている。