深大寺城 のバックアップ(No.2)

現実の城情報 Edit

【歴史】
深大寺城は、江戸城を築城した太田道灌の主家として知られる扇谷上杉氏の城として古くから有名であった。また文献史料により来歴がはっきりしている城としても以前から注目されている。
扇谷上杉定正は年不詳9月15日付けで家臣の篠窪三郎左衛門尉宛てに書状を出しており、それによると二日前の9月13日に深大寺城からほど近い「小沢河原」で合戦があり、それに勝利したことを喜ぶと同時に、「深大寺」にいる自軍の活躍を賞賛している。
ここで見られる「深大寺」は書状の内容や「小沢河原」との位置関係から考えて調布市の深大寺を指しており、軍勢がいたことから城郭が存在していたと考えられる。
この史料の年代はは特定できないが、当時の政治情勢から判断して長享2年(1488年)から明応3年(1494年)の間であることは確実となっている。
この史料によって深大寺城は扇谷上杉氏の城として1490年頃にはすでに存在していたことが明らかになり、その性格はつなぎの城だったと考えられる。


『河越記』や『北条五代記』などの江戸時代に編纂された軍記物には、天文6年(1537年)7月に川越城の扇谷上杉朝定が小田原城の北条氏綱に対抗するために深大寺の「古城」を再興したと書かれている。
また年不詳7月3日付けで、玉縄城主北条為昌が家臣の矢野氏に宛てたとされる書状には、「川越衆」(扇谷上杉氏の軍勢)が「神大寺」へ陣を寄せてきたという情報が為昌のもとに届いたことが記されている。
その人数は少ないと報告されているが、詳細は不明なので人を派遣して様子をうかがってくるように為昌が命じていることもわかる。
ここで見られる「神大寺」も深大寺であり、年代も為昌の存在や7月3日という日付、軍記物との関係から、天文6年(1537年)と確定できる。
つまり軍記物だけでなく古文書からも天文6年(1537年)に深大寺城が存在していたことが明らかになり、その性格は対北条氏のための境目の城に変化したと考えられる。


このように、深大寺城は扇谷上杉氏の城として1490年頃に存在しており、その後いったん廃城となり「古城」となったこと、そして北条氏の進出を受けて扇谷上杉氏が天文6年(1537年)に「再興」したことが明らかになった。
その後使用された形跡は見られないため、廃城になったと考えられる。


【城郭構造】
深大寺城は奈良時代に創建された古刹である深大寺の目前にある、神代植物公園附属水生植物園内の小高い丘の上にあり、平成19年(2007年)に国指定遺跡に指定され各方面から注目を浴びている。
主郭は自然の景観を残したまま整備され、周囲を土塁で囲まれ、北側虎口は櫓台となっている。
東・南側斜面には腰曲輪がめぐらされ、直下には野川が流れている。
主郭と第二郭の間には空堀が残っており、一部が発掘調査に基いて復元されている。
第三郭と土塁の間の堀も復元され、発掘調査で発見された建物跡も展示されている。


深大寺城の発掘調査は昭和33年(1958年)~昭和37年(1962年)、平成7年(1995年)~平成17年(2005年)に行われた。
これらの発掘調査によって、深大寺城が主に三つの曲輪から成り立っていることが確認された。
これにより縄張構造が具体的に把握されるようになったため、縄張研究が可能となった。
また城内の建造物が確認されたことも大きな成果で、第二郭に長屋のような建物跡が九棟、主郭にはより簡素な建物跡が四棟見つかり、曲輪の性格が異なることが考えられるようになった。
さらに現状遺構とは異なる古い段階の堀が第二郭で発見され、折れを伴っているこの堀は軍記物に登場する「古城」「ふるき郭」の堀だと評価された。
そして出土遺物から年代が推定され、遺物は13世紀から16世紀前半のものがほとんどであり、扇谷上杉氏関係の城跡から出土する「かわらけ」と呼ばれる土器も出土していることから、軍記物に登場する天文6年(1537年)という年代と矛盾しないことがわかった。
こうして軍記物の記述が考古学的に裏付けられたため、この時期の城郭を考えるうえで重要な城郭の人を派遣してとして深大寺城が注目されるようになった。


このような成果を背景としつつ縄張研究も数多く行われている。
その縄張構造は天文6年(1537年)時点でのものであり、北条氏の城郭に比べて築城技術が未発達であることがわかった。
深大寺城は扇谷上杉氏による築城技術が見られる城として貴重なものとなっているのである。

所在地東京都調布市深大寺元町
現存状態曲輪、空堀、土塁など
城郭構造連郭式平山城

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