歴史欄書いた人です。昼休みにここ覗いたら質問があったので、とりあえず文献だけあげておきます。日本語で簡単に読めるのは、少々古いですが、高津春繁編『ギリシア・ローマ神話辞典』、1960年、岩波書店の、「アテーナー」の項です。外国語でもよろしければ、たとえばM. H. Cancik, et al. (hrsg.), Der Neue Pauly, Brill, 1996-2003(英語版もあります)のAthenaの項にあります。 -- 2020-03-09 (月) 12:51:38
コロナのせいで仕事が忙しくて、やっと連休だ!と久しぶりにやってきたらサーバーが死んでいたので、1ヶ月くらい遅れましたが、アテナイという都市名が先か、アテナという女神名が先かについてです。大学図書館が使えないので、手許にある本だけでごめんなさい。Bibliotheca Britannica, 15th ed. (1970)は、Vanderpoolが執筆していますが、この人は古代アテナイのクロノロジー研究で著名な学者であり、都市名が先だということを主張した論文で有名なGérard Rousseauの論文(1968)を知らなかったとは思えません。ですから、女神の名が先だという説が完全に否定されたとは言えないのは確かです。しかし、近年の研究では、都市名が先だという説が有力なのはほぼ間違いないようです(ネットで参照できるものだと、たとえばDictionary of Deities and Demons in the Bible, 1995, s.v. Athena; The Oxford Handbook of Ancient Greek Religion, 2015, p.374. ネットにあがっていないものだと、たとえばDer Neue Pauly, 1997, s.v. Athena.)。特に、英訳Greek Religion(1985)も出ていて、ギリシア宗教史研究の基本書とされるBurkertのGriechische Religion der archaischen und klassischen Epoche, 1977が、都市名説を主張していることは大きな影響を及ぼしていると思います。とはいえ、都市名が先という根拠となっているAtana Potinijaという、クノッソス出土の線文字B文書の解釈について疑問を呈した本があったと思います(いまちょっと見つかりません)。ですから、最初に書いたように、都市名が先という説のほうが有力なのは間違いないと思いますが、御指摘のように、断定的な書き方は誤解を招くものだったかな、と思います。すみません。 -- 2020-05-02 (土) 00:15:16