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天正3年（1575年）、信元は武田勝頼への内通を信長に疑われて殺害され、水野氏は一時断絶した。刈谷城は信長の家臣である佐久間信盛に与えられたが、信元の内通を讒言したのがこの信盛だったともされる。
天正8年（1580年）に信盛は信長によって追放され、刈谷城には信元の末弟にあたる忠重が入り水野氏は再興された。
忠重は慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦い直前に加賀井重望に殺害され、忠重の嫡男・勝成が刈谷城主となった。勝成の代で刈谷城は近世城郭へと改修され、三河の重要拠点となった。
勝成が大坂の陣の功で大和郡山城に加増・転封されると、弟の忠清が刈谷城主となった。忠清が寛永9年（1632年）に吉田城に移ってからは、深溝松平忠房、久松松平定政、稲垣氏が3代、阿部氏が2代、本多忠良、三浦氏が3代と頻繁に城主が交代し、延享4年（1747年）に土居利信が入ってからは土井氏9代の下で明治維新を迎えた。
昭和25年（1950年）に「刈屋」の表記が「刈谷」に改められ、それまでの「刈屋城」表記も「刈谷城」となった。

刈谷城は三河最西部、逢妻川河口の三河湾の入江である衣ヶ浦に突き出た台地上に築かれ、衣ヶ浦に面して本丸が置かれた。本丸の周囲には細長い小規模な帯曲輪がめぐり、本丸を守っていた。
本丸の海に面していない北・東・南には天然の沼を利用した広大な水堀がめぐり、その外側に本丸を囲むようにして二の丸が置かれ、本丸と二の丸との間には角馬出が設けられた。
二の丸の東端部には巨大な馬出状の三の丸が置かれ、三の丸の外側には侍屋敷が広がっていた。
築城当時の刈谷城は本丸のみの単郭式であったとされ、水運の便を図るため船着場も設けられていた。別名の「亀城」は周囲を水に囲まれていた姿に由来するものとも考えられている。江戸時代には干拓が進み、衣ヶ浦は逢妻川の河口となった。
江戸時代に近世城郭へと改修された刈谷城は、「正保城絵図」によると本丸の北西と南東に二重櫓が建てられ、本丸の周囲を土塀で囲み、東側には石垣を積み上げていた。大手門付近にも石垣が積まれたが、城の周囲の大部分は土塁で守られていた。
大手口は三の丸の東側に置かれ、本丸まで合計4つの城門が厳重に守りを固めていたように、本丸への侵入を防ぐために防備を強化した縄張だったが、平時は本丸までの通行の便が悪く、江戸時代を通じて御殿は三の丸に置かれた。